History and Features of Yamanaka Lacquerware
山中漆器の発祥は16世紀後半の安土桃山時代(1568-1600)。
良質の木と漆を求めて越前(現福井県)から真砂(現山中温泉)に移住した、
木地師たちの「轆轤(ろくろ)挽き」が始まりとされています。
江戸時代に入り、加賀百万石・前田藩の文化・美術工芸の振興策を受けて、
技術的進歩を遂げ、当時の最先端の技法が生み出されました。
江戸中期には京都・金沢・会津から蒔絵技術が取り入れられ、
漆下地の上の蒔絵部分だけを高く盛り上げる
「高蒔絵」などの技法も確立されました。
当時、「奥の細道」の俳聖・松尾芭蕉をはじめとする文人墨客や、
日本海海運を担い経済的繁栄を極めた北前船の船主・船員らの湯治客が、
名湯と知られた山中温泉を訪れた際に、
山中漆器のデザイン・機能に魅せられ買い求めたと言われています。
昭和の高度成長期に入り、木製漆器に加えプラスチック樹脂の素地に
ウレタン塗装を施す近代漆器の生産に戦後いち早く取り組み、
伝統の職人技術・デザインを基礎とした
山中漆器ブランド(経済産業省指定・伝統工芸品)を
大切にしながら生産額日本一の漆器産地として発展を続けています。
Kindai Maki-e and Maki-e
「近代蒔絵」は蒔絵の種類のひとつで「スクリーン蒔絵」ともいいます。
1960年代に近代的な技法として登場しました。
1.同じ絵柄がつけられる
シルクスクリーン印刷*の技術を用い、
手作業で版を重ねることを繰り返すので
同じ絵柄をつけることができる。
2.蒔絵の技法が加わっている
金紛、色粉などを用いてグラデーションが表現(蒔き)できたり、
絵に厚み(高蒔絵)をつけることができ、蒔絵の風合いを楽しめる。
3.大量生産も可能
ひとつひとつ手作業を繰り返すため、短期間での大量生産には
むかないが日数をかけての生産は可能。
4.様々なものに描ける
1.原稿(企画・編集・デザイン)
絵柄や色味、表現方法を決める。
2.製版
色数の版を作る
3.印刷(スクリーン印刷)
手作業で一版ずつ色を重ねる。
さらに粉蒔きなど蒔絵の技法を手作業で追加する。
*シルクスクリーン印刷の歴史 |
シルクスクリーン印刷(孔版印刷)の歴史は
日本では1917年に万石和善政が
シルクスクリーン版画の制作が盛んになったのは1960年代。
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参考文献:「山中漆工史」 山中漆器漆工史編集委員会編集